ベイトリールはダイワしか使わないぜ! シマノ?なにそれ?自転車屋?
そんな暴言を絶叫してるアナタ、SVスプール入ってますか?
いまさらですが、やっぱりイイですよね。もうちょっと安ければもっといいんですけど。
でもデビュー当初は高い評価と同時に、かなり的はずれな批判も受けていました。
批判してた人たちの言い分が、
「いうほど飛ばない」
これ、かなりズレた批評ですよ。
SVスプールのコンセプトが理解されてなかったんですね。
このスプールは、おかっぱりのロングキャスト用じゃありません。
(あとで説明しますが。状況によっては、より遠投できる場合もあります)
じゃあSVスプールは、どういうコンセプトの下にデザインされてるか?
それが分かれば、より効果的な使い方が出来ますよね。
そしてSVスプールにあった初期不良(中期まで?)の改善というか、改造の方法も書いてみます。
Contents
SVスプールのコンセプト
コンセプト自体は、名前が表してますね。
ストレスフリー・ヴァーサタイル (Stress-free Versatile)
多目的な用途に、ストレスなく使用できるって事。
多目的とは、たとえばノーシンカーワームのピッチングから、1オンスオーバーのプラグのオーバーヘッドキャストまで、気持ちよく投げられる。
ストレスフリーとは、ベイトリール最大のストレス、バックラッシュを極力減らす。
そしてあらゆるキャスティングスタイル(オーバーヘッド、サイド、ロール、ピッチング)を気を使わずに行えるって事。
という風に解釈してます。
まず軽量リグ。
これをベイトフィネス機にせまるぐらい、軽くキャストできる。
そしてどんなキャストスタイルでも、スムーズにキャストできる。
これらは、どちらも同じ理由から成り立ってるんじゃないでしょうか?
その理由とは?
スプールの回り出し、これが軽い力ですばやく行えるような設計がされてるからじゃないかと。
具体的には、
1)G1ジェラルミンの超軽量スプール。
ローターなどを除いたスプール単体で7gちょっと。
これを穴開けのブランキング加工を使わず実現してるのはすごい。
(ブランキング加工は、スプールの強度が極端に低下しますので要注意。)
2)ベアリング、インダクトローター、ワッシャーなどの他のパーツが、すべてスプール軸の中心線上に配置されるため、慣性重量の増加が最小。
遠心ブレーキなんかだと、ブレーキパーツが構造上どうしてもスプール軸から一番遠い部分に配置される。
これだと回りだしは悪いし、惰性で空回りしやすくなりバックラッシュの原因になりやすい。
3)これまでの大径ベアリングから、ゲタをかませた小径ベアリングに変更して、ベアリングの初期抵抗を減らす。
これらの工夫が、スプールの回り出しを驚異的にカルくしてるようですね。
そして慣性重量が低くて回り出しが速いということは、止まるのも速い。
重いスプールのように惰性で回り続けないので、バックラッシュを防ぎやすい。
スプールがただ軽量なだけだと。
その扱いはピーキーになりやすいです。
これは社外のカスタムスプールを使った事がある人なら、実感されてるハズ。
あまりにもサミングコントロールがシビアになりすぎて、投げづらくなったり、逆に飛ばなくなった経験がある人も多いのでは?
ダイワ(SLPワークス)では、これを「エアブレーキ」と呼ばれるマグネットブレーキで解決してます。
このエアブレーキ、これまでのマグフォースVと何が違うのか?
このエアブレーキの理論、最初はさっぱり理解できませんでした。
というか、今でもちょっと・・・
マグフォースVとの大きな違いは2点。
1)スプールの回転に合わせてインダクトローターが飛び出すのは一緒だが、スプールシャフトに対して水平方向ではなく、スプールの回転方向に回りながら動く。
2)ローターを抑えるスプリングに、かなりバネレートの低い物が使用されてる。もうほんと、フニャフニャなスプリング。
この2つの違い。なんのため?
これはマグフォースVよりも、スプールを磁界側に出しやすくするのと、出たスプールを長く留めるためでしょうか?
そして回転の遠心力以外の力でスプールを引っ張ってる?
たとえばスプールとローターのヨーモーメントの差とか?
水平方向ではなく、斜めの切り欠きで回転方向にローターが回るように動く設定ですので、そんな風に思えます。
むかしからダイワリールの人なら知ってるでしょが、マグフォースVはピッチング時にはブレーキ弱、フルキャスト時にはブレーキ強の、メリハリを強く付けたセッティングになっていました。
そのため、ブレーキのオン・オフがちょっとピーキーな性格。
チューニング車でいえば、半クラのない、昔のメタルクラッチのような特性。(わかりにくいですか)
ちょっとでもスプールの回転が落ちたら、とっととローター引っ込めてブレーキカット!みたいな感じですよ。
対してエアブレーキでは、ローターが磁界内でくつろいでる時間を長く取ってる印象。
特にキャスト終盤、スプールの回転が落ちていく時、まだローターが残ってブレーキ掛けてる感触があります。
でもまあこれのおかげで、バックラッシュを防いでるのでしょう。
そしてこの特性が、最後の″もうひと伸び感″が損なわれて、おかっぱりのロングキャスト派に
「SVスプール、なんか飛ばねえ」
って、言わせてるのかも?
でもですね、これも状況によるんです。
向かい風気味の時なんかは、この特性がかなり有利に働きます。
最低限のサミングでコントロールできるんで、ムダにスプールの回転を殺さずに済むんですよ。
結果的には、こっちの方がよりロングキャスト出来たりしちゃう。
まあ、私みたいなボートアングラーには、このSVスプールの特性は大歓迎ですよ。
とにかく、小技キャストがバンバン決まりやすいですからね。
手首やヒジだけで、クイッとキャストして、バックラッシュにあまり気を使わずにシュパッとルアーを飛ばせるのは快感ですよ。
ショート・ミドルでのテクニカルキャストや、ピッチング。
これらではSVスプールの恩恵は圧倒的です。
1回使ってしまうと、あとには戻れません。
SVスプールの問題(初期不良)
さて、コレですよ。
前の記事でも書きましたが。
私はTD-Zに、スティーズ用のSVスプール105を入れてます。
2015年から、少しづつスプールを入れ替えていったんですが。
実は初期のSVスプールには、構造上の欠陥があるんですね。
私が買ったSVスプールのうち、3個にはこの欠陥がありました。
その欠陥とは?
インダクトローターが飛び出したまま、戻らなくなってしまう事がある!
こうなると、ブレーキが強く効いた状態で固定されてしまうので飛ばなくなります。
この現象、手首のスナップとロッドの反発力だけでキャストしてれば、そうそう起きないんですが。
ちょっとリキんで腕の力でキャストしちゃったりすると、このローターロックが起きやすくなります。
この絵は、左手で描いたわけではありません。
エアブレーキは、ローター部分がななめに回転しながら、せり上がる構造ですが。
ここが上がりすぎて、エッジというか、土手の部分にのっかっちゃうんですね。
で、もとに戻らなくなる。
まあエッジの部分がもっと鋭角なら、固定されずに元に戻ると思うんですけど。
ちなみに現行のSVスプールでは、このトラブルは起きません。
何が違うのか?
旧型SVスプール
現行のSVスプール
違いがわかりますか?
スプール内側の奥、ローターのシャフトの台座。
これが現行品では、白いパーツで補強されてる。
なぜ台座の補強がトラブルの解決になるのか、ぜんぜん分かりませんが。
でもこのタイプは、ローターロックのトラブルがまったく起きないのは確か。
これからSVスプールを買おうという方、少々割高でも、実店舗で商品をチェックしてから買った方がいいですよ。
ネットで買うと、旧型なのか対策品なのか選べません。
けれど運悪く、対策前の旧型を買った場合ですが。
ちょっとした加工で、ローターロックを防ぐ方法を紹介します。
SVスプールのローター固定を防ぐ加工
改造のハナシの前に。
私は手持ちのSVスプールのうちの2つは、シャフト部分を接着剤で固定して、ローターが出てこないようにしてます。
これはブレーキの効きを抑えた、ピッチング専用スプールとして使用中。
私の場合ピッチングは、メカニカルブレーキはスプールがカタつくほどユルユル、マグネットブレーキはゼロ、極力ノーブレーキ状態でやるのが好きです。
そして残りの″対策前スプール″には、いまから説明する加工を施して使ってます。
ローターの過剰なせり出しとロックを防ぐには、いくつかのやり方が考えられますね。
要はローターが上がりすぎないようにすればいいんですから、
1)スプリングをもっとバネレートの高いモノに交換する。
2)スプリングとワッシャーの間にワッシャーを追加して、1)と同様の効果を得る。
3)台座のエッジの部分を加工して、乗り上げないようにする。
まず、3)は難易度が高いので却下。
1)なんですが、適正なバネレートに行き着くまでに、かなりトライ&エラーが必要です。
バネレートが強すぎると、マグフォースVのような効き方になってしまうかも?
バネレートアップは、ほんのわずかでイイはずなんですよ。
そこで2)を選択。
さいわい、むかし使ってたTD-Xなんかのいらないスプールがごろごろあります。
それをバラして、ワッシャーを用意します。
そしてSVスプールのCリングを外す。
このCリング、外す時に飛ばしやすいので要注意。
外すのは専用工具がなくても、ラジオペンチで出来ます。
外してワッシャーを取るとこんな感じ。
このスプリングに、純正のワッシャーと追加ワッシャーを乗っける。
そして、Cリングを溝に戻せば出来上がり。
・・・なんですが。
こういった作業に慣れてないと、Cリングを元通りに溝にハメるのは地獄のようにたいへんかも?
TD-Xスプールの場合は、リング溝がローターの壁より外側なのでやりやすいんですが、SVスプールの場合は、溝がローターより内側にあるんです。
つまり、ラジオペンチでCリングをはさんで取り付けることが出来ない。
ネットで見ると、
何時間も格闘したとか、
結局取り付けをあきらめてショップに頼んだとか、
苦労した人が多い。
たしかに、私も最初は途方に暮れましたよ。
でもちょっとしたコツが分かってからは、あんがい楽勝でした。
スプールを安定して置けるものを用意。
(画像ではマスキングテープの上に置いてます)
ワッシャーを乗っけたら、左手の人差し指と中指でワッシャーの両端を均等に押して、スプリングを押し下げる。
(Cリングのハマる溝が見える位置まで、なるべく水平に押さえる)
Cリングをラジオペンチやピンセットでつまんで、″溝にはめようとはせず″、″ワッシャーの上に置く″。
(はめようとすると、溝に対してリングが斜めになりますので失敗します。ワッシャーの上に、リング溝に対して水平に置くだけ。これがコツです。)
Cリングが、溝に水平方向にハマる姿勢で置けたら、ラジオペンチでCリングの背中と反対側のスプールシャフトをはさんで、ゆっくりCリングをはめ込む。
完成
作業の注意点なんですが。
SVスプールは軽量化のため、スプールエッジが極薄に加工されてます。
ほんとに、ペラッペラの薄さです。
このスプールエッジには、実釣時には負荷が掛かりません。
ですので、強度が必要ないからなんですが。
でもうっかり、硬い床に落としたり。
もしくは指で強く掴んだりしちゃうと、かんたんに「クニャッ」と変形します。
取り扱いには要注意です。
*まあ、変形してもかんたんに修正出来ますけどね。
丸い棒(お箸とか絵筆)で内側からクリクリやってやれば、けっこうきれいに戻せます。
SVスプールのワッシャー追加加工の結果
結果から言うと、ワッシャー追加は成功。
100%ではないですが、ローターロックはほとんど起きなくなりました。
改造前だと、釣りを始めてから昼ぐらいには、ロック現象が起きてたんですが。
加工後だと、1日中大丈夫な感じです。
釣行2,3回で、ロックが1回起きるペースですか。だから100%解消ではない。
まあ、あれですよ。
ゴルゴ13の狙撃成功率が、100%では無いのといっしょ。(違いますか)
でも、これからSVスプールを購入する方。
高くても、実店舗で現物を確認して、対策品を買いましょうね。
そうすれば、こんな作業は必要ないですから。
*余談ですが。
3,4年前に、ダイワのカスタマーセンターに電話したんです。
もちろん内容はSVスプールのローターロックという欠陥について。
そしたら担当者いわく、
「そんな事例は聞いたことないし、製品テストでも一度も起きてない」
完全否定。大企業のリコール隠しですよ。
ところが、それからちょっとしたら対策品に替わってた。
思わず、薄めに「フッ」と笑ってしまいました。
追記 2019年8月
上で紹介したワッシャー追加による、バネレートアップですが。
問題が発生したので訂正します。
その問題とは?
わずかではありますがバネレートアップしたことによって、ローターが磁界に入るタイミングというかスピードがキャストの仕方によっては遅くなってしまった。
そのせいで不要な糸ふけが出やすくなり、バックラッシュ気味になりやすくなっちゃった。
ストレスフリーじゃなくなったんですよ。
これはマズい。
検討し直しですよ。
前述の通り、ローターロックが起きる初期不良品と、後期の対策品の違い。
これはローター軸のパーツの固定方法だけ。
対策品は、よりしっかり固定されてる。
じゃあ初期のひ弱い固定を、接着剤などでガッチリ固定してやったらどうか?
さっそく試してみます。
ローターパーツをバラして・・
ローター軸のパーツの固定部分に、毎度おなじみのセメダインスーパーX2を塗り込んでガッチリ固定してみます。
アロンアルファとかじゃなく、セメダインスーパーX2を使う理由ですが。
スプールはメンテのたびに、パーツクリーナーやオイルを使うから。
化学薬品に弱い接着剤は使えないんですよ。
その点、セメダインスーパーX2は耐久性がハンパない。
なんせ釣りよりはるかに過酷な、クルマのメンテや改造に使用してるくらいですから。
24時間以上放置。
完全に乾燥したら、パーツを組み上げる。
さて実釣でテスト。
スピナベで、丸一日マシンガンしてきました。
ローターロックは一度もナシ。
大成功です。
しかしこのトラブルって、完全にリコール案件ですよね~
ダイワさん、そのへんはどう捉えてらっしゃるんでしょうか?